‘弁護団の声明など’

平成26年3月20日(木)口頭弁論期日実施のご報告

2014-03-20

平成26年3月20日(木),横浜地方裁判所101号法廷で,第1次訴訟の第2回口頭弁論,第2次訴訟の第1回口頭弁論の各期日が,合わせて実施されましたので,ご報告いたします。

当日の期日においては,かながわ弁護団において,

・ 各被害者の方の避難や被害の実情を記載した準備書面
・ 原賠法と民法上の不法行為との関係について記載した準備書面
・ 被告国からの求釈明に対する回答を記載した準備書面

を提出するとともに,弁護団と原告ご本人による意見陳述を行いました。

期日(法廷)の後には,裁判所・被告と進行協議を実施するとともに,別会場で,訴訟の状況に関する報告集会を開催いたしました。

次回以降の口頭弁論期日は,下記の日時に実施予定となっております。

平成26年5月28日(水)午後2時~
平成26年7月16日(水)午後2時~
平成26年9月3日(水)午後2時~

ご参加を希望される方へのご案内は,改めてホームページ等で行います。

国及び東京電力株式会社に対する損害賠償請求訴訟の第3次集団提訴のご報告

2014-03-10
2014/3/10
福島原発被害者支援かながわ弁護団

第1 はじめに

福島原発被害者支援かながわ弁護団(以下,「かながわ弁護団」といいます。)は,2011年10月1日に発足し,主に神奈川県内に避難されている福島原発事故被害者を支援するため活動を行ってまいりました。

すでに,国及び東京電力株式会社(以下,「東電」といいます。)を被告として,横浜地方裁判所に,福島原発事故被害の損害賠償請求訴訟を提起していますが(2013年9月11日(水)に第1次提訴,同年12月12日(木)に第2次提訴を実施),2014年3月10日(月),国及び東電を被告として,同裁判所に,上記訴訟の第3次集団提訴(以下「第3次提訴」といいます。)を行いました。

第2 第3次提訴の概要

1 被告
国及び東電です。

2 原告(被害者) … 12世帯・27名
本件提訴の原告は,福島原発事故に伴い神奈川県,埼玉県,東京都等に避難を余儀なくされている方,そのご家族等の被害者です。

3 請求内容 … 請求金額・約7億7528万円
本件提訴で請求する損害の内容(項目)は,①避難生活に伴う慰謝料,②ふるさと喪失・生活破壊慰謝料,③財物損害,④その他の損害(避難費用・弁護士費用等),です。
請求金額は,提訴時点で約7億7528万円です(訴訟進行中に請求を追加することがあります)。

第3 第1次提訴及び第2次提訴の状況

※ かながわ弁護団において実施している,第1次提訴及び第2次提訴の被告及び請求内容(項目)は,第3次提訴と同様です。

1 第1次提訴(2013年9月11日提訴)
(1)原告(被害者) 17世帯・44名
(2)請求金額    約11億円(後日追加の可能性あり)
(3)進行状況
2014年1月29日(水)に第1回口頭弁論期日を実施,2014年3月20日(木)午後3時に第2回口頭弁論期日を実施予定(横浜地裁101号法廷)

2 第2次提訴(2013年12月12日提訴)
(1)原告(被害者) 6世帯・22名
(2)請求金額    約6億円(後日追加の可能性あり)
(3)進行状況
2014年3月20日(木)午後3時に,第1次提訴の第2回口頭弁論期日と併合して第1回口頭弁論期日を実施予定(横浜地裁101号法廷)

第4 各地の提訴予定

福島原発事故から3年の節目にあたる今般,かながわ弁護団以外にも,日本全国の各地で集団提訴が実施,あるいは実施が予定されています。

現時点で,2014年3月10日またはこれに近接した日に集団提訴が実施される(予定を含む)のは,北海道(札幌),福島,山形,新潟,群馬,千葉,東京,神奈川,愛知,大阪,京都,兵庫,宮城,埼玉,岡山,愛媛であり,茨城,広島,福岡でも準備中であるとの情報が入っています。

第5 提訴当日の進行について

2014年3月10日(月)
・14時00分~(日本銀行横浜支店前)
 提訴行動:横浜地方裁判所に訴状を提出(撮影あり)
・14時30分~
 記者会見,報告集会(於:産業貿易センタービル 地下B102会議室)

上記のとおり,実施しました。
記者会見・報告集会において,第3次提訴にあたっての原告団声明を公表いたしました。
追って,原告団声明や提訴当日の写真などをアップいたします。

福島原発かながわ訴訟 第2次訴訟 原告団声明の公表について

2013-12-13

「福島原発被害者支援かながわ弁護団」では,2013年12月12日に行った第2次提訴に合わせて,「福島原発かながわ訴訟原告団」の声明を公表しましたので,お知らせいたします。

福島原発かながわ訴訟 第2次原告団声明

「人間らしく生きられる世の中を」

東京電力福島第一原発の核災害によって、神奈川県で避難生活を余儀なくされている私たち6世帯21名は本日、国と東京電力株式会社を被告として横浜地方裁判所に損害賠償を求める訴訟を起こしました。9月11日の17家族44名に続く第2陣です。

請求の内容は、第1陣と同じ
①避難に伴う慰謝料
②生活を破壊され、ふるさとを奪われたことに対する慰謝料
③不動産損害等の個別の損害賠償、の3項目です。

「福島より避難生活二年九ヵ月 われも夫も疲れ果てたり」

先日、新聞で見かけた歌です。
「思わず口をついて出てしまったような、重い重い一首。当人でなければ、仮住まいの心痛は分からないのだ思う。深いため息を思わせる」との選者の評がついていました。

ああ、北風がつよくなったなぁ。阿武隈山脈の向こうには重い雲。
会津や新潟は雪だな。そろそろ沢庵の大根は乾いたかな。
隣のばあちゃんの干し柿は、ぽやぽやになったころか……。
気がつくと、窓の外はビルの波。そんな日々が重なって、今日で1008日です。
これが、全国47都道府県に散らばっている原発被害者5万余人の、大方の姿なのです。

私たちが疲れるのは、それだけではありません。東京電力、国の仕打ちです。
混乱状態の最中に156ページもの「補償金ご請求のご案内」なるものを送りつけ、
領収書1枚1枚の説明を迫り、あげくの果て「合理性・必然性はない」と切り捨てる東電。
原因も、被害の全容も、放射能汚染の実態も不明のまま、突然「事故収束宣言」をする国。
20ミリ~50ミリシーベルトで避難区域を分断。果てしない高濃度汚染水漏れ。
「事故はコントロールされている」「健康に対する問題は過去も、現在も、将来もない」とうそぶく安倍首相。
58人もの子どもの甲状腺がん。「子ども・被災者支援法」は骨抜きにされ、「1ミリシーベルトは将来目標。
個人線量で管理」という原子力規制委員会。
住民の健康を無視して繰り広げられる「復興キャンペーン」。
賠償打ち切りを準備する原子力損害賠償紛争審査会…。
数え上げればきりがありません。

私たちは、一体、何をしたというのか–。
朝に夕に、こんな疑問を繰り返しながら、世の中の動きに翻弄されている辛さ。
第三者に分かってもらうことは難しいかもしれません。
しかし、分かってほしい。分かってもらわなければなりません。
そうでなければ、私たちの味わっている悲劇は繰り返される。
当たり前なことが通る世の中を取り戻したい。
子どもや孫たちに、人間らしく生きられる世の中を残したい―-そう思って、私たちは疲れた体に鞭打って立ち上がりました。

全国12都道府県で進んでいる集団訴訟の原告の皆さん、原発のない世界、人間の尊厳を守るために活動されている皆さんと手を携えて、この願いを実現させていきたいと思います。

2013年12月12日  福島原発かながわ訴訟第2次原告一同

国及び東京電力株式会社に対する損害賠償請求訴訟の第2次集団提訴のご報告

2013-12-12

20131212
「福島原発被害者支援かながわ弁護団」では,本日(2013年12月12日(木))午後1時,国及び東京電力株式会社(以下,「東電」といいます。)を被告として,横浜地方裁判所に,福島原発事故被害の損害賠償請求訴訟の第2次集団提訴(以下「本件提訴」といいます。)を行いました。

今回の第2次提訴は,2013年9月11日に行った第1次提訴に続く,かながわ弁護団では第2弾の提訴です。

◎原告(被害者) 6世帯・21名

(第1次提訴の原告:17世帯・44名と合計すると23世帯・65名となりました)
本件提訴の原告は,福島原発事故に伴い神奈川県内などに避難を余儀なくされている被害者の方々です。
第2次提訴の原告の従前の住所は,いわき市,浪江町,富岡町,楢葉町です。

◎請求内容 約6億円

(第1次提訴の請求額 約11億円と合計すると約17億円となりました)
第2次提訴で請求する損害の内容は,第1次提訴と同様,①避難生活に伴う慰謝料,②ふるさと喪失・生活破壊慰謝料,③財物損害,④その他の損害,です。

(項目の詳細は,2013年9月11日実施の第1次提訴に関するご報告をご覧ください)

本件の提訴は,国及び東電に対して訴訟を提起することを希望される被害者の一部です。
かながわ弁護団では,2014年3月にも,第3次以降の集団提訴を予定していますので,随時,訴訟や弁護団の活動状況をホームページでご報告いたします。

また,第2次提訴にあたり,「福島原発かながわ訴訟原告団」から,「福島原発かながわ訴訟原告団声明」を公表いたしましたので,別途公表させていただきます。

福島原発かながわ訴訟原告団声明の公表について

2013-09-11

「福島原発被害者支援かながわ弁護団」では,2013年9月11日に行った第1次提訴に合わせて,「福島原発かながわ訴訟原告団」を結成し,同原告団の声明を公表しましたので,お知らせいたします。

福島原発かながわ訴訟原告団声明

「暮らしを返せ ふるさとを返せ」

東京電力福島第一原発の核災害によって、神奈川県等で避難生活を余儀なくされている私たち17世帯44名は、本日、奪われた暮らしとふるさとを取り戻すため、国と東京電力株式会社を被告として損害賠償を求める訴訟を起こしました。

請求の内容は、①避難に伴う慰謝料、②生活を破壊され、ふるさとを奪われたことに対する慰謝料、③不動産損害等の個別の損害賠償、の3項目です。

2011年3月11日。この日を境に、私たちの人生は一変しました。

東北地方を襲った巨大地震と津波に、原発の爆発と大量の放射性物質の飛散という未曾有の核災害が追い討ちをかけたのです。

私たちは逃げ惑いました。メルトダウンした原発の状況も、放射能の危険性も知らされないまま、避難所を転々としました。
多くの家族、知人、友人を亡くし、弔うことすらできず、遺骨を抱いたまま泣いた人も少なくありません。
子どもや孫たちと引き裂かれ、温かい夕餉を共にすることもできませんでした。逃げられなかった人たちは、窓を締め切り、放射能の恐怖に怯えました。
多くの町や村は、無人地帯と化しました。

あれから2年半です。

いまなお15万を超す人々が全国47都道府県で避難生活を送っています。
生まれたばかりの孫は歩き、中学生だった子どもたちは高校生になり、70代のお年寄は80歳を超えました。
見通しの立たない避難生活に追い詰められています。ふるさとでは、置き去りにされた家畜も犬も猫も死に絶え、イノシシやネズミが駆け回っています。
雑草に覆われて廃屋同然の我が家。営々と守ってきた田畑は原野に戻ろうとしています。
穏やかな気候と豊かな自然、伝統文化に恵まれたふるさとは、時間の経過とともに、決定的に破壊されようとしています。
子や孫の体と将来を想い、無念の涙が流れ続けているのです。東京オリンピック招致に浮かれる気持ちには、到底なれません。

融け落ちた膨大な核燃料を抱えた原発からは、いまなお、ふるさとの海に、空に、放射性物質が流れ出しています。
安倍首相が本当に「コントロール」できるのでしょうか。
事故原因も被害の全容も、責任の所在も放置したまま、健康を無視した「帰還・復興キャンペーン」が続けられています。
東電は賠償を引き延ばし、値切ることに躍起です。国は黙認しています。検察当局は十分な捜査もせず、刑事責任を闇に葬り去ろうとしています。
これが人権を保障する憲法を持った法治国家なのでしょうか。

私たちは日本の国民です。愛する家族を抱えた庶民です。支えあってきた地域住民です。
人間らしい生活を奪われ、朽ち果てていくわけにはいきません。人間の尊厳を否定する「棄民政策」が繰り返されることは、断固、拒否します。

私たちの究極の願いは、いま経験しているこの苦しみを、日本のどこでも、未来の子どもたちにも、二度と味わってほしくないということです。
そのために、原発と核兵器の廃絶を願い、真の「子ども・被災者支援法」を求めて行動している全国の心ある人々との連帯を信じ、共に闘っていきます。

この願いがかなうまで、私たちは、「暮らしを返せ ふるさとを返せ」と叫び続けます。 

2013年9月11日  福島原発かながわ訴訟原告団

国及び東京電力株式会社に対する損害賠償請求訴訟の第1次集団提訴のご報告

2013-09-11

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「福島原発被害者支援かながわ弁護団」では,本日(2013年9月11日(水))午後1時,国及び東京電力株式会社(以下,「東電」といいます。)を被告として,横浜地方裁判所に,福島原発事故被害の損害賠償請求訴訟の第1次集団提訴(以下「本件提訴」といいます。)を行いました。

◎原告(被害者)17世帯・44名

本件提訴の原告は,福島原発事故に伴い神奈川県内または東京都内に避難を余儀なくされている被害者の方々です。
本件提訴の原告の従前の住所は,南相馬市,富岡町,いわき市,浪江町,富岡町,郡山市,本宮市,大熊町,田村市,須賀川市です。

◎請求内容 約11億円

本件提訴で請求する損害の内容は,①避難生活に伴う慰謝料,②ふるさと喪失・生活破壊慰謝料,③財物損害,④その他の損害,です。

① 避難生活に伴う慰謝料
 被害者1名につき,1か月あたり原則として35万円の慰謝料請求
 (すでにADR手続等で受領している金額は控除)

② ふるさと喪失・生活破壊慰謝料
 被害者1名につき,2000万円(避難区域の指定の有無を問わない)

③ 財物損害
単に福島原発事故前の交換価値(時価)で損害を算定すべきではなく,生活の基盤を,新たに立て直すため必要な賠償を求めます。

具体的には,

◎ 居住用不動産(土地)
13,688,000円(住宅金融支援機構「平成23年度フラット35利用者調査報告」による,土地付き注文住宅利用者の土地取得費の全国平均額)を最低額とする。

◎ 居住用不動産(建物)
22,380,000円(上記「フラット35」による,住宅建設費の全国平均値)を最低額とする。

◎ 家財
損害保険料率算定機構が公的統計資料等を用いて算出した,全国の平均的な家財所有額に基づく賠償

本件提訴は,国及び東電に対して訴訟を提起することを希望される被害者の一部です。
かながわ弁護団では,今後も,第2次以降の集団提訴を予定していますので,随時,訴訟や弁護団の活動状況をホームページでご報告いたします。

また,本件提訴にあたり,「福島原発かながわ訴訟原告団」を結成しました。
別途,「福島原発かながわ訴訟原告団声明」を公表いたします。

平成25年9月11日(水) 第1次訴訟提起 提訴行動・報告集会のお知らせ(予告)

「福島原発被害者支援かながわ弁護団」では,来たる 平成25年9月11日(水)午後,

福島原発事故の被害者を原告,国及び東京電力を被告として,原発事故被害の損害賠償を求める訴訟を,横浜地方裁判所に提起いたします。

9月11日(水)の当日は,この第1次訴訟の原告の方及び弁護団員を中心として,横浜地方裁判所への提訴行動及び,報告集会を開催いたします。

この第1次訴訟の原告以外の方々で,当日の提訴行動・報告集会へのご参加をご希望の方は,当弁護団事務局(045-651-5052)までお知らせください。

なお,9月11日の提訴行動及び報告集会の概要については,これらの実施後に当ホームページで改めてご報告いたします。

居住用不動産賠償に関する弁護団の基本方針 公表のお知らせ

2012-09-05

「福島原発被害者支援かながわ弁護団」では,2012年9月3日,各地の弁護団と共同で,東京電力福島第1原子力発電所事故により避難を余儀なくされた被害者の居住用不動産の賠償について,弁護団としての基本方針を公表しましたので,お知らせいたします。

この基本方針は,先に公表された東京電力株式会社の賠償基準が,被害者の生活基盤の確保に十分なものとは言えないことも踏まえ,各地の弁護団において検討を重ね,公表するに至ったものです。

居住用不動産賠償に関する弁護団の基本方針(全損の場合)

2012年(平成24年)9月3日

基本となる考え方

本件原発事故により,被害者が従前生活の拠点としてきた住宅(土地,建物)は,放射能による被曝や長期の強制的,集団的避難等により,現在に至るまで生活の基盤としての機能を全面的に喪失した。

被害者は,「土地」「建物」という個々の不動産についての交換価値を喪失したのではなく,生活の基盤そのものを喪失したのである。

他方,本件原発事故は,被害者に対し何らの時間的余裕を与えずに避難を余儀なくさせた。被害者はそれぞれの縁や伝手を頼りに,着の身着のまま,全国各地へやむなく避難していったのである。ほぼ全ての被害者にとって,移転先を選択する余地などなく,その場所での生活再建のための基盤を構築せざるをえない状況にある。

従前の生活基盤を失わせ,避難した先での生活基盤を構築せざるをえないという本件原発事故の被害実態を考慮すれば,本件原発事故による居住用不動産の損害は,単に喪失した不動産の交換価値の賠償ではなく,被害者がそれぞれの移転先において生活基盤を回復できるだけの賠償,すなわち,当該移転地での生活基盤の再取得価額の賠償がなされなければならない。

居住用土地についての賠償の考え方

1 方針
居住用土地の所有者に対して,1368万8000円を標準賠償価額として賠償すべきである。ただし,従前有していた土地の広さや価値に応じて補正を行うことができる。

2 理由
上記基本的考え方のとおり,いかなる場所に避難した場合でも,その場所での生活基盤の回復が必要であり,本来ではその場所における,一般的な広さの居住用土地を購入できるだけの賠償がなされるべきである。
しかしながら,土地の地価については地域差があるため控えめな賠償価額として,少なくとも全国平均としての賠償価格の賠償がなされるべきである。
そこで,住宅金融支援機構「平成23年度フラット35利用者調査報告」における,土地付き注文住宅利用者の土地取得費の全国平均額(19頁「土地付注文住宅融資利用者の主要指標」「土地取得費 平成23年度 」である,金13,688,000円」(敷地面積の中央値は192㎡)を標準の賠償価格とすることとする。
もっとも,従前に有していた土地の広さや地価など,個別の事情により調整すべき要素もあることから,上記賠償価格を出発点として,賠償額の調整が行われるべきである。

居住用建物についての賠償の考え方

3 方針
2238万円を標準賠償価額とする。ただし,従前有していた建物の広さや価値に応じて補正を行うことができる。
仮に,いわゆる経年減価を考慮した賠償額決定を行う場合であっても,損失補償基準を使用するなど,生活再建を考慮した基準を活用した賠償額の算定がなされるべきである。

4 理由
第2と同様,全国平均としての賠償価格の賠償がなされるべきである。
そこで,土地と同様にフラット35の統計データに基づく住宅建設費の全国平均値である金22,380,000円(住宅面積の平均値は115.3㎡)を標準の賠償価格とする。土地と同様,従前の建物の広さ等,個別の事情がある場合には,この標準賠償価格から調整を行った賠償額の算定がなされるべきである。
また,仮に,従前の建物の築年数から経年減価を考慮して賠償価格を算定する場合であっても,移転先での生活基盤の再建が本件事故における損害賠償の基本であることから,公共用地の取得に伴う損失補償基準等,被害者の生活再建を考慮した算定基準を用いた賠償額の算定を行うべきである。

第4 個別事情に応じた賠償

上記の考え方のほか、被害者の個別的な実情等に応じた賠償額の算定をなすことも可能とする。

東日本大震災による原発事故被災者支援弁護団(原発被災者弁護団)
団長  丸山 輝久

福島原発被害者支援かながわ弁護団
団長  水地 啓子

原発被害救済千葉県弁護団
団長  福武 公子

福島原発被害首都圏弁護団
共同代表  森川 清 
同     中川 素充

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故被害弁護団
団長  安田 純治

福島原発被害救済新潟県弁護団
団長  遠藤 達雄

福島原発被害弁護団
共同代表  小野寺 利孝
同     広田  次男


資料 モデルケース1 帰還困難区域①(福島県双葉郡大熊町)

資料 モデルケース2 帰還困難区域②(福島県双葉郡大熊町)

2012(平成24)年7月2日(月)ADR集団申立てのご報告

2012-07-24

2012(平成24)年7月2日(月)ADR集団申立てのご報告

福島原発被害者支援かながわ弁護団は,2012(平成24)年7月2日(月),同日に開所した原子力損害賠償紛争解決センター福島事務所いわき支所に対し,東京電力に対する損害賠償を求めるADR集団申立てを行いました。

<申立件数>
5件(5世帯),16名

<申立人本人の従来の居住地>
楢葉町

<請求総額>
1億3111万9536円

今回の申立ては,いわき市上荒川応急仮設住宅に避難中の楢葉町の被害者の方々についての申立てです。

これまでかながわ弁護団は,神奈川県内の被害者の方々のみならず,上荒川応急仮設住宅にも出張し,同所に避難中の楢葉町の被害者の方々からも相談,依頼を受けてきました。
今回の申立ては,こうした上荒川仮設住宅の方々の集団申立の第一陣となるものであり,今後も,同様の集団申立てを順次行っていく予定です。

これまでの集団申立てと合わせて,かながわ弁護団によるADR申立て件数は34件95名となりました。

かながわ弁護団では,今後も原発被害者の真の救済のために,活動を行って参ります。

「自主避難」の方へ~東電へ請求書を出す場合にはご注意下さい!

2012-07-24

「自主避難」の方へ~東電へ請求書を出す場合にはご注意下さい!

東京電力株式会社は,いわゆる「自主避難(自主的避難)」をされた被害者の方々に対し,原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針追補」に基づいて,損害賠償の請求書の送付を始めています。

東電が作成した請求書には,注意していただきたい点があります。詳細はこちら

東京電力から「1度請求をして支払をしたら,それ以上は払いません」と言われないためにも,今回の請求が一部請求であることを明確にしておくべきですが,東京電力に対し,請求書を既に送付してしまった方は,以下の文書に必要事項を記入の上,東京電力に「特定記録」で郵送して頂き,文書で一部請求であることを明らかにしておくことをお勧めします。

文書はこちら

東京電力にこれから請求書を送付する方は,請求書の余白部分に,

「この請求書による請求は一部請求であり,不足部分は別途請求します」

と記載し,明確にしておくことをお勧めします(記載例はチラシをご覧ください。)。

※また,東京電力に請求書や,その他の文書を送る場合には,必ずコピーを取ってから送ることを強くお勧めします。

ご不明な点などは,当弁護団(045-651-5052)まで,お気軽にお問い合わせ下さい。

原子力損害賠償紛争解決センター第1号事件和解成立を受けての声明

2012-03-05

「福島原発被害者支援かながわ弁護団」は,2012(平成24)年3月1日(木),原子力損害賠償紛争解決センター第1号事件において,東京電力株式会社が和解仲介案を受諾し,和解が成立したことを受け,声明を公表しましたので,お知らせします。


原子力損害賠償紛争解決センター第1号事件和解成立を受けての声明

2012年3月1日
福島原発被害者支援かながわ弁護団
団 長  水 地 啓 子

1 はじめに

福島県内から東京都内に避難している原発事故の被害者が原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)に損害賠償請求の申立をしていた第1号事件について、被害者と東京電力との間で和解が成立した。
センターの仲介委員が昨年12月27日に示した和解仲介案を、被害者側は受諾する意向を示していたにもかかわらず、東京電力が一旦は拒絶の回答を行ったことに対し、関係者や市民・マスコミ等から強い批判が投げかけられ、東京電力がようやく受諾し、和解成立に至ったものである。

当弁護団も、本年2月3日、和解仲介案を拒絶する回答を行った東京電力に対して抗議の声明を発表し、東京電力に対して和解仲介案の受諾を求めていたものであり、このたび、比較的早期に、上記和解成立に至ったことは、被害者全体の救済に向けた大きな一歩を踏み出せたという観点から評価するものである。

2 本和解成立の意義

本和解成立の意義はいくつかあるが、まず第一に、不自由な避難生活の継続を余儀なくされ、経済的にも困窮している被害者を
迅速に救済するという視点から、清算条項を付さない形での損害賠償金の内払いが合意されたことである。
被害者と東京電力との間において賠償額について争いがある状況のもとで一切賠償金が支払われないとなると、日々の生活に困窮している被害者は、事実上、自らの主張する損害の賠償を求める途を閉ざされることになる。

清算条項を付さない形での賠償金の内払いは、まずは被害者に人としての最低限の生活を保障し、センターを利用して適正な損害賠償を求めてゆくことを可能にする基盤であり、当弁護団も、賠償金の内払いの実現を最重要課題として位置づけてきた所以であった。
本和解成立の意義の第二は、過去に東京電力から支払われた仮払補償金の控除が、今回の和解では行われず、先送りされた、ということである。

被害者は原発事故からまもなく1年が経過しようとする現在においても、今後の生活の見通しが全く立っておらず、その損害は日々拡大しているのであるから、仮払金を現時点において控除する必要性は全くない。被害者の生活保障の観点からすれば、仮払金の控除は最終段階で行われるべきであって、今回の和解はその可能性を開くものとしてその意義は大きい。

その他にも、本和解の内容は、不十分とはいえ、原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」で目安とされた慰謝料額に一定額の加算が認められ、さらに、不動産を含めた財産の価値の減少等に対する賠償が認められるなど、評価できる点を含んでいる。

東京電力は、本和解で認めた損害賠償金の内払いや仮払金の控除の先送り等について、あくまで個別事案ごとの判断によるものだとの姿勢を崩していないが、迅速な被害救済を図るために、あらゆる事案に適用する普遍的な枠組みと位置づけるべきである。

3 迅速な賠償の実現に向けて

以上のとおり、本和解の成立は、センターへの申立を通じて被害者の完全賠償の実現を目指す当弁護団の活動のうえで重要な足がかりといえるものであり、センター仲介委員等が本和解成立に向けて尽力されたことに対し、深く敬意を表するものである。

しかし、センターを通じた解決手続には課題が山積している。
センターは、裁判によらない形で迅速かつ適正に被害者への損害賠償を実現するために設置された機関であるにもかかわらず、発足後6ヶ月が経過した現在において、1000件を超える申立件数に対し、和解成立した件数は10件程度であり、3ヶ月を目安に解決するという当初の目標にはほど遠い。
もちろん、その原因の一つに損害賠償に消極的な東京電力側の姿勢ということがあり、今後は、賠償金の内払いの実現等により解決件数の一定数の増加が見込めるであろうが、今後さらに増加する申立に対し、有限な人的物的設備を前提にして、適正かつ迅速な解決が飛躍的になされるという期待を抱ける状況にはない。

当弁護団が、センターへの申立手続を行うことを通じて実感するのは、損害賠償額の請求・認否・確定のプロセスが煩瑣で、これだけの大量の被害者を救済するシステムとして十分に機能し得ないのではないかという懸念である。
たとえば、生活費増加分について、一つひとつ領収証等の資料を要求し、精査しなければならないというのであれば、申立を行う被害者の労力も大きく、申立後の手続にも時間を要する。
生活費増加分についての被害者数に応じた定額保障など、賠償額の認定の簡素化等を行うことが急務であると考えられる。

また、翻って、センターも東京電力も、福島原発の被害者の救済のあり方がどうあるべきか、ということを今一度考える必要がある。
被害者は、住居も仕事も地域も一度に失って、今なお今後の生活の目処も立たない人たちである。
まず優先すべきは、今なお苦しんでいる福島の人たちに人間らしい生活を一刻も早く保障することであり、当面は、原賠審の「中間指針」にとらわれない慰謝料額の増額を認めるべきである。
また、不動産を含めた財産価値の喪失・減少の損害額評価にあたっては、新たな土地での人間らしい生活の再出発を保障するという観点に立った評価がなされなければならない。

当弁護団としては、引き続き被害者の完全賠償を求める努力を重ねてゆく所存である。
被害者に対する適正かつ迅速な賠償の実現に向けて、センターに対しては、さらなる運用改善を求めるとともに、東京電力に対しては、原発事故の被害者の救済がどうあるべきかを今一度考え直し、その姿勢の抜本的転換を求めるものである。

以 上
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